K君のこと 3月30日’02

 K君が夕方訪ねてきた。うちの長男と同じ年の生まれだから25歳になる。車の
方に行ってみると、去年11月に生れた子供がかわいい奥さんの腕に抱かれて
すやすやと眠っている。男の子ということ。生れて間もない子供は本当に無垢で
あどけなくいじらしく、これが天使というのだろうといつも思う。
 「野菜を頂きたいんですけどー」ということで、貯蔵中の野菜をみつくろって袋
に入れて手渡す。「これでいいですかー」とポケットから出すので、「いいよ、ま
た草取りにでも来てくれれば・・」というと、「そうですか!」と嬉しそうに言う。「ま
だ忙しくはないけどね・・」「そのうちねー」
 「仕事はー?」と聞くと、「ん、今してないー」というK君から受け取ることはでき
ないもの。でもK君は、どうにかなるでしょうーという感じで、受ける印象は全く深
刻なふうではない。キャラクターもあるだろうし、時代もいくらか反映しているの
か・・。とにかくもってラフで、ガチガチ感が全くない。子供が生れてもそのスタン
スは変わらないようだ。
 実は、K君は去年、「働かせてくれないでしょうか?」ということで訪ねて来た
のだけれど、「給料を払う余裕がないので・・」(子供の教育費、持ち越しの赤
字でいつもアップアップ状態が実情)ということで結果的にはお断りをする形に
なってしまった。・・のだが、K君は昨年何度か農園に来て、びっしりと何の畑か
判らないほど(人参なのですが)生い茂った草を、実に根気よく草取りをしてくれ
たりして、その都度野菜を持っていってもらったりしたのでした。
 
 これまでゆい自然農園では、二組の若い夫婦を研修生として受け入れ、今は
立派に独立して野菜作りをしている。天径・奈緒ちゃん夫妻は独立して8年目。
資金も全くなしーからの出発でしたが、貸家と借地で、持ち前の熱心さと息の
あった夫婦の連携で今や押しも押されぬ!?農夫と農婦。
 林さん夫妻は、堅実に資金を十分に蓄えてからの独立で、今年で二年目。両
親の後ろ支えもあって経営もまた堅実経営。
 ”師匠”は逆に教えていただくようなこともままある立場になっております。

 というわけで、K君が本当に農業、それも有機農業を、やりたいと思っている
のか-.もし本当にやてみたいと思っているなら、何か手助けしてあげられる事は
してあげたいと思うのだけれど、今のご時世、ここ最近益々もって農業もご他聞
にもれず超厳しい現実にある。ラフで資金も全くもってないK君が、農業ー有機
農業でやっていけるのかーはなはだもって疑問なのも確か。はたして今彼はど
んな気持ちでいるのかー、また聞いてみる機会があれば聞いてみようと思って
いるのだけれど・・・。
 それにしてもあのどこか達観したふうなひょうひょうとした風は、おもしろいー
といったら語弊があるだろうか・・。余分なものは持たず、あまり欲もださなけれ
ば、どうにか生きていけるよーみたいで、やっぱりおもしろいーのです・・。