無垢な・・  6月19日’10


 「可愛い〜!」・・・乳飲み子をあやしながら、抱っこしながら、気持ち良さそうに沐浴させてもらっている顔を見ながら・・娘がつぶやく。

 5月19日。娘が男の子を出産した。新しい命が誕生した。
 前の日18日午前中からの陣痛、吐き気も催して食べ物が喉を通らず、点滴を打ってもらいながら、翌日ようやくパートナーY君の立会い励ましを得ながら力を振り絞っての出産。
 「もう〜死ぬかと思った――もう〜産まない!」・・・まあお産の直後は大抵そう思うでしょう・・・。
 
 今、娘は家で、新生児の子育て真っ最中。泣くことでしか空腹やおむつがぬれたことなどを伝えられない、いたいけな小さな命が、精一杯に生きようとしている。・・・と見えるのはこちらの思い込みで、精一杯とか何とかの・・以前の本能に添っているのだろうけれど・・。

 生後一ヶ月を迎えて、2700gで生まれた命が今はもうふっくらして、抱っこする手に重みが伝わってくる。
 始め何日かだけはミルクも併用したけれど、今は母乳のみを与えている。
 「夕べはも〜う一時間置きに起こされたよ〜〜眠い〜〜!」・・などという日もあったりしながら、今はけっこうまとめて長く寝るようになってきた。ご機嫌で起きている時は、「ニターッじゃない〜〜」(娘)という笑い顔をして和ませてくれたり、タイミングよく「う〜う〜」とか声が出て嬉しくさせてくれたり・・、日に日に成長が感じられる。
 
 2、3年前までは、「私結婚しないから―ひとりがいいよ―孫の顔を見るのはあきらめてね――」「あなたたちを見てれば結婚願望なんか起きないから―」 {―反面教師っていうのもあるんだからね―}{結婚しない、子供をもちたくない・・って生物として後退じゃない・・}「私別に人類の為に生きてるんじゃないから―」「これからどんどん悪くなるのに子供がかわいそうだわ―」 ――とか言っていた娘に、結婚を決意させてくれたY君に親としては本当に感謝という感じです。子供も授かることができ、全面的に庇護しなければ生きていけない無垢な命に向き合って、すっかり母親になっている娘に、やはりというか何かしら安堵というような気持ちで本当によかったと思う。

 同じ佐久市内のアパートに新居を据えたので、Y君も勤めが終わった後には家に来て、こまごまとやさしく気遣ってくれる。始めはぎこちなく泣かれ通しだった沐浴も、今はもうすっかり慣れて、Y君もまたすっかり父親の顔。その様子がまた微笑ましい。

 娘が子供をもち親になったことがなぜかしみじみと嬉しい。これは何なのだろう・・・。やはり??いわゆるDNAのなかに生物としてそんなふうに組み込まれているのだろうか・・。新しい命の誕生――神秘的で厳粛で奇跡的なこの出来事に感謝するとともに、命を授かることの幸せを思う。ハル君!ここに生まれてきてくれてほんとにありがとう―。
 自分の一番身近な存在の成長を見守っていくことは大変なこともあるけれど、それ以上に楽しいことだし、親もまた一緒に成長していくようなものだ。子供にエネルギーをもらって楽しんでがんばれ!
 
 しかししかし・・、孫ができるなどは、そりゃあそんな年になればそういうことはあって当然なのだけれど・・、なんか他人事のようなまだまだ先のような・・なんとなく強烈な?実感がなかったのだけれど・・、とうとう!?いうなれば「ばばちゃ」になってしまったではないか・・。かろうじて? まだ50代でめでたく!?です。早く先に行きな―と後ろから押されているような気がしないでもない。アッ、別にひがんでいるわけではありませんのであしからず・・です。

 新しい命、初孫が生まれて、やはりこれからの自然環境や社会経済のことなどが、孫が生きていく世界として気になる。地球は大きくない。空も海も生き物の移動も気候も、すべてが繋がっている。今は食料も水も地球上では不足している。・・のに、日本は自国で食料を賄えず、カロリー計算ではほぼ60%を他国に頼っている現状だ。衣食足りて・・とかいうけれど、あれは食衣!だと思う。、まず食料と水、そしてしいてあげれば塩。農業を回復し食料を確保することが先決なのではないだろうか・・。それも農薬や化学肥料にあまり頼らない環境にも配慮した農業のありかたが必要なのではないだろうか・・。
 都市の若い人が就農を目指し研修を志してくる。当園も今年は3人の若い研修生が来て一緒に無農薬有機農業に取り組んでいる。大型機械での大型農業が主流のなかで、少量多品目栽培の無農薬有機農業が入り込むのは少々ハードルが高い面もなきにしもあらずなのだが、農業者の高齢化が進んでいる時代でもあるので、やりたいという若者にはもっと門戸を広げて就農援助の手助けをしてもらいたいものだと思う。

 孫の成長は親の子育て按配共々これから楽しみではあります。(孫という言葉にまだ不慣れです・・)


 

HOME  「気まぐれなエッセー」トップに戻る