内助の功   9月15日’03

 「ご主人は奥さんの‘内助の功’についてどう思われていると思いますか?」
 「ハッ?? エッ???・・・」」
 
 望月町に「かたりべの会」という会がある。「かたりべ」とはお酒の名称ですので誤解なきように―。社会教育のある集会で、米作りの伊藤さんと、酒造会社の「大澤酒造」のご主人が、意気投合して生れたお酒ということを聞いております。
 「かたりべ」の酒米を作っている伊藤さん、「かたりべ」を作っている大澤酒造の大澤さんの他、どうしてこういうメンバーになったのか詳しいことは知りませんが、パン屋の坂田さん、蕎麦処「職人館」の北沢さん、野菜作りと養鶏をやっている木曾さん、養蜂家の荻原さん、てんけい農園の小宮山さん、そしてゆい自然農園の由井サンもメンバーの一人に加えさせていただいている男性陣の集まりである。(他にもおられるかもしれませんんが・・)
 その「かたりべの会」が長野朝日放送TV局の取材を受けた。何でも開局何十年かを記念して9月27日に放送する「6時間生テレビ」(だったかな?)で、今年は“食”をテーマにするそうで、その中でVTRとして流されるものらしい。
 
 「かたりべの会」のメンバーが一同に会しての取材の他に、メンバー個々の生業の様子の取材も行われた。ゆい農園にもスタッフの方が見えられて、出荷の様子や啓盟サンの畑での作業の様子などを、ビデオカメラに収めていかれた。

 その折に、「やはり女性の声もここはぜひ入れたい――」とかで、私も取材を受けるはめになった。
 「ご主人(やはりちょっとひっかかりますがここは―)のことについてどんなふうに思われているのかなどふつうに話していただければけっこうです。昼食後に改めて伺います。」
 けっこうです――と言われても、そんないやしくもTVで内輪話のような日頃の?不満をぶちまける?わけにもいかないし、困るよ――と言いながらも、どこかしらでおもしろそう・・などと満更でもない気持ちがもたげてきたりもするわけで、また「かたりべの会」の皆さんいずこも女性の力が大きいのだから、男性だけで語るのは片手落ちだろう―という気持ちもあり、困るよ―が了承という感じで2時間遅れの取材開始となった。
 仕事をしながらで・・ということで、チンゲン菜の草かきをしながらの撮影、インタビュー。

 そして冒頭の‘内助の功’が出てくることになる。
 インタビュアー氏は、年の頃まだ30代前半乃至半ばほどとお見受けの男性氏。
 まさに耳を疑る―とまではいかなくても、‘内助の功’が出てくるとは思いもしなかった。
 「有機農業をやりたいと思ったのは、有吉佐和子さんの“複合汚染”に影響されたむしろ私の方で、苗作りはすべて私がやっており、以前は(今は手伝ってくださる方もいるので)堆肥を撒いてロータリーを駆け、管理機で畦たてもし定植も草取りなども葉物はほとんど私がすべてやっていましたから、‘内助の功’などとはゆめゆめ思ってもいませんし、啓盟さんもそんなふうには思ってないと思いますよ―。」
 ついでに言う。「農家の女性は畑仕事から家の中のことまでほんとによく働きます。それなのに納税者ではなし世帯主ではなし自分名義の何があるわけではなし・・、何の権利もなく働いているわけでほんとに理不尽だと思いますよ・・。」

 ちなみに自主申告の白色申告では、事業専従者ということで、女性は80万の控除があるだけの立場なのである。息子の奨学金の申請に必要な所得証明を税務署にもらいにいったら「ご主人の委任状が必要です」などということがありました。「私が計算をしているのです」などは通用しません。ヒジョーにヒジョーに腑に落ちない。・・なんて思うのは私だけ??
 あれ?これってもしかして結婚制度に異議を唱えてる―ってことになるのかしら・・・??
 でも家族っていうのもいいものだと思ったりもするわけで・・、一概に制度を否定するわけにもいかないところがまたむずかしかったりもするわけです。でもやはりどこか腑に落ちません。
 まず夫婦別姓から―、いいかもしれませんね。江戸時代などは意外に?もっと自由で夫婦も別姓だったとか・・。戦争の時代に銃後を守るということでで女性を家に縛るようになったとかいうこともちょっと耳にはさみましたが――。

 ちょうど傍で手伝ってくれていた、東京でイタリアンのシェフをしていた連さん(女性です)と、その日たまたま農園を訪れてくれた、ほうれん草の研究をしているという三井さん(女性)も、声をそろえて言う。
 「まさか―‘内助の功’が出てくるとは思わなかったわね〜〜」

 まだ若い男性ディレクター氏の頭では、ご主人様、そして内助の功の“奥”さん・・・という構図がすっかり出来上がっていたわけである。やっぱりひっかっかるなあ〜〜。その方が楽―とか思う女性もおそらくいたりして、逆にそちらのほうがしたたかだったり??なんてこともあったりするかもしれませんが―。
 それでもやはりやはりです、女性男性はそれぞれの得手不得手を補いあい助け合いながら、やはり社会制度としてもっと平等であってほしいと思うのでありますのです。


 

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