サルスベリ  7月18日’03

 白い花が咲くサルスベリの木がある。あった―。
 もう15年以上も前になるが、啓盟サンの両親の仲人を務められた隣の郡である南佐久郡佐久町に住む年配の女性から、確か電話だったと思うが、「白いサルスベリをもらっていただきたい」という連絡をいただいた。私が啓盟サンの母親を車に乗せて、一時間ほどかかるその方のお宅へいただきに伺った。他の用事もあったのか、それともサルスベリの木をいただくためだけに伺ったのか、その辺のところは私は感知していなかったけれど、とにかく車で一時間かけて伺い、啓盟サンの母親は1m20cmほど伸びたサルスベリの木をいただいた。
 それをどこに植えるのかと思っていたところ、啓盟サンの母親は、家の北側の緩い傾斜地に白樺や櫟の木などを啓盟サンの父親がアトランダムに植えた場所の少しばかり空いた所に、スコップで穴を掘り植え付けた。見るからに、あまり日も当らず、木も混んでいて、私は「どうしてこんなところに・・」とズーッと思っていた
 それでも何とかサルスベリの苗木は根付いて、狭い所で窮屈そうにしながらも、枝を伸ばし白い花もけっこう咲くようになり、目を楽しませてくれた。
 一度枯れかかったので幹の途中で切ったところ、また息を吹き返して、枝から葉や花の芽を吹き出すようになった。けれどやっぱりこの場所は日当たりも悪く、伸び伸びと枝を伸ばせない。

 3年前の秋、その時でまだ僅か2mほどの木を、私は思い切って移動することにした。もう霜も降りようという10月も半ばだったろうか、ちょっと時季が遅いかな・・と思いながらも、スコップで根元を掘る。案の定、根が張っていて容易には掘り出せない。けっこう根も切ってしまう。
 土手に半地下で作った貯蔵庫の前の広い所に移動した。けれどやはり時季が少し遅かったかもしれない。翌年になってもなかなか芽吹きが始まらない。ようやく秋も深まりゆくようになった頃だろうか、一見枯れたような枝から若い緑色の芽が噴きだした。おー、スゴイ!

 ところがこの冬は例年になく冬中雪が多かった。除雪作業は啓盟サンがトラクターでダーッとやる。ここまでやらなくても・・・・というようなところまで力任せにドドッ―と押し避ける。雪だけでなく土まで引掻いて、ここは花壇だから―などおかまいなしに雪と土の山を作ってしまう。
 そしてそして、あのようやく根付いて若芽を吹いたサルスベリもトラクターで押し避けられてしまった。
 「あ〜〜〜、なんてこと〜」白い花の咲くサルスベリはけっこう珍しい―と聞いていたから、尚のこと・・・・。
 
 それでも、ダメ元ということもあるからと、そのかわいそうに押し避けられてしまったサルスベリを、この春掘り出し、また別の場所に短く切り込んだ状態で植え込んでみた。
 春4月に植え替えて、5月、6月・・、全く変化がない。やっぱりだめか・・・と、半ば諦めかけていたところ、つい先日、切り株のような枯れた根元から二本の若芽が伸び始めているではないか―。
 「お―!スゴイ!スゴイ!スゴイ!」 もうつい叫びだしそうな感動である。良かった、良かった・・・。
 「あんたはスゴイ!」 大体はひとり言で植物に話しかけたりするのだけれど、これはもう最大級の賛辞をかけてやっても足りないほどである。
 この芽が花を咲かせるのはいつのことになるのだろう。楽しみである。
 
 ちなみに啓盟サンの母親は現在91歳でまだまだ元気です。
 

HOME エッセートップに戻る