高畠から・・   8月4日’02

 高畠のTさんからぶどうが届いた。作っている人が子供の名前でも呼ぶように親しみやその他もろもろが込められたようにデラ!と呼ぶ「デラウェア」。一つの房に、これ以上は納まりませんというほどにきっちりと実をつけた、これぞ葡萄色の一粒一粒が輝いて見える。食べるのももったいないようなのだが、果物の誘惑?には弱い私、さっそく口にほおばる。甘さとジューシー感が口に広がる。・・・美味しい! 食べもので幸福感が味わえるなんて最高!
 高畠はりんごも洋梨もさくらんぼも、何でもとにかく美味しいものが穫れる「まほろばの里」だ。

 山形県東置賜郡高畠町。私はその隣の米沢市の生れだが、父と祖母は高畠町の出身だから、高畠とは縁が深い。
 だが米沢と高畠は隣り合ってはいるが、気風が違う。米沢が城下町なのに対して、高畠は天領、つまり直接治める殿様とかいうのがいなかった地。だからなのか、高畠の人は概して言葉からしてちょっとテンションがたかく飾り気がなく開けっぴろげで、よそ者もふところ深く気さくに受け入れる印象がある。前向きで明るい人が多い。

 実は白状?すると、今から5年前、いろいろ考えるところがあったりして、私は高畠町で一年間お世話になった。
 その一年というのは、何年分にも当たるような、貴重な得がたい語り尽くせないような経験をさせていただいた。その一年がなければ得られなかった多くの心優しい情けある個性的な素晴らしい人たちとの出会いは貴重な宝ものだ。
 ぶどうを送ってくださったTさんは、水の炭素比率を高める装置(なのかな?)を使って電子農法というやり方でぶどうなどを栽培している。まだ若い、たぶん40代。とても勉強していていろんなことをよく知っていて快活に話をする。

 高畠町は、言わずと知れた(知る人ぞ知る)有機農業の先進地でもある。
 今も"高畠病”にかかった都会の若い人達が高畠に移り住み、いろいろな大学の多くの学生も合宿や研修などで頻繁に訪れ、高畠の人たちはそれをあたたかく気取らずに受け入れている。
 星寛治さん(高校の大先輩.。静かにお話になります。)がいろいろ本を出していらっしゃっていますので、高畠の有機農業の取り組みなどは星さんの本を読むとよくわかります。
 思えば私が有機農業というのを始めて耳にしたのは、星さんが仲間の青年たちと「高畠町有機農業研究会」を始められ、それがTVで紹介されたのを見た時でした。多分私が高校の時ぐらいだったのではないでしょうか。「ふーん、有機農業っていうのがあるんだ・・・」 多分その時私の頭の隅っこに有機農業がインプットされた。

 高畠町には、星さんたちが運営している「共生塾」、早稲田大学政経学部教授の大塚勝夫先生(大塚先生も高校の大先輩です。)が始められた「屋代村塾」がある。大塚先生は志半ばで残念ながら他界されてしまわれたが、その志は多くの人に受け継がれている。それは共生社会。老若男女、障害のある人ない人、国の違い、人間と動物、人間と自然、それらが真に共生できる世界を皆で考え築いていこうとしていくこと。"共生”・・本当にこれからの世界のキーワードでは・・。
 
 ある意味、今私は有機農業で高畠とつながっている。高畠は心のどこかで私のふるさとのような気もしている。
 これからますます高畠は目が離せない・・というような進み方をしていってほしいと思う。

 大塚先生は、「農的生活」、「農的に生きる時代」、「新しい経済学を求めてー環境と生命と開発への視点ー」     
   などの著書があります。

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