多摩川の鮎   9月25日’02

 9月22日、多摩川の河原の東名高速の下で、“芋煮会”をしてきた.。
 東京在住の高校の同級生が何人か集まって、ここ5年ほど毎年やっていた。例年は11月初め頃にやっていたのだが、今年は山形から仕事の関係で出てくる人がいて、それならと早めの芋煮会となった。
 11月になれば、ゆい農園の収穫作業も急ピッチとなり、忙しくて出かけられないが、今頃なら何とか時間がとれるので、私も長野から車ではせ参じ!合流した。

 何しろ、山形の秋は“芋煮会”がなければ始まらないし終わらない。職場で、地域で、学校のクラスで、サークルで・・、一人で何回も今日はこちら、明日はあちら・・なんていうのもざらなのだ。
 そういうところで育っては、郷里を離れても、秋になると、“芋煮会”をしなければ、なんだか忘れ物をしたような気分になる。そんなわけで、多摩川の芋煮会ーとあいなった・・。

 その日は、男性7名、女性が私も入れて3名。材料、その他鍋などは、いつものメンバーがバッチリと準備万端で、私はゆい農園の畑から、ネギとトウモロコシ、最後の生りのキュウリ数本、手作り味噌、それと薪を持参した。

 在学当時の高校は、クラスに女性が7名ほどしかいなかった。家庭科もなかったから、ある先生などは、「この高校に女性はいない」などとのたまわれておられましたほどー。
 そのせいでもないでしょうが、いつも男性陣は、甲斐甲斐しく(!?)調理すべてをやってくれるのです。(いつも・・というのは、大体同じメンバーで、毎月一回東京周辺の山歩きをしていて、その時もーということ。) いつでも女性陣はそれを眺めながら待つだけー。「おいしい、おいしいーー」と“私食べる人”だけの“係り”にさせてくださるのです。うるわしく心優しく、これぞ男!と讃えてあげたくなってしまいます・・。
 この日の“鍋奉行”は、某電気メーカー部長のS君。材料の刻みから味付けまで全部やってくださり、“火奉行"はK君が怠りなく・・。里芋、牛肉、こんにゃく、きのこ、豆腐も入って、それとゆい農園のねぎと・・。しょうゆと隠し味に味噌少々で・・。久しぶりの芋煮を、格別に美味しくいただいたことはいうまでもありません。

 Y君は、6月に農園に来て畑を手伝ってくれて(手伝わされて?)、その後に送った調理用のトマトでトマトソースを作り、玉ねぎ、ピーマンなどを煮込んで持ってきてくれた。その微妙な味の見事さ・・。普段にも台所に立つ、元サッカー部Y君の料理の腕は“ほんまもん”です。

 そしておまけに、その日釣りをしていた人から、釣ったばかりの鮎7尾を「家に持って帰っても喜ばないから・・」といただき、すぐさま、もちろん(!?)男性陣が、器用に割り箸を削って串にし、鮎を刺して塩焼きにしてくれる。小振りだが天然の鮎。ほろ苦さの中に柔らかい淡白な白身が、程よい塩味でやさしい味がした。
 まさか多摩川のここで天然の釣りたての鮎を味わえるとは、思ってもいなかった。

 多摩川でもこの辺りは川底や河原に石が多いところなので、自然に濾過され、水がきれいな場所なのだそうだ。
 
 おじさん(若く見えたが、定年で退職し・・とのことだから)はすすめられた芋煮とお酒を口にしながら、ひとしきり鮎談義。おとりで釣る方法ではなく、針を転がしてひっかけるやり方で釣るのだそうな・・。その転がすのは、下が石だから、技術がいるらしい。

 週3日はアルバイトをしていると言ってらしたが、毎日のように釣りに来ているらしい陽に焼けた顔。一人(独り)を楽しむ悠々自適さ、哀感、諦念・・。ー勝手に想像して、鮎の味が口に残った、秋の日の一日・・だった。

 
 

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